化学肥料等を使用しない農業

草や野菜の残渣が、化学肥料の替わりになります。

化学肥料を使用しなくても、野菜の残渣や草を「緑肥」として、土の上に載せて置くことによって、肥料の替わりになります。
刈り取った雑草や野菜の残渣を、土の上に「草マルチ」として載せていきます。そうすると、やがて、この雑草や残渣は、地表付近で分解され、野菜の栄養源となっていきます。

植物の主要無機三要素については、化学肥料を用いなくても大丈夫だと考えました。

  • カリについては、長石などの岩石の風化で土壌中には比較的多く存在するので、化学肥料を与えなくても活用できると考えられます。
  • 窒素とリンについては、流亡しやすかったり、土壌中の金属と結合して不溶化したりするが、土壌中の共生微生物との共生関係をとおして、植物が得ることが可能であると考えられます。(参考とした文献を下に載せました。)

 なぜ、植物は共生微生物を必要とし、これらの菌が根に侵入するのを受け入れるのだろうか。それは植物の生育にとって必要な無機元素を、効率よく獲得できる仕組みがこれらの菌に与えられているからである。植物の主要無機三要素のうち、長石などの岩石の風化で土壌中には比較的多く存在するが、窒素、特に硝酸態窒素は土壌から流亡しやすく、また、リンは土壌中に大量に存在するアルミニウムや鉄と結合して不溶化するため、植物はこれらの要素を優位に得られず飢餓状態に陥りやすい。

 そこで、植物は、これらの菌に糖などの光合成産物を分配する見返りとして、窒素固定菌からは空気中から固定した窒素を獲得し、菌根菌からは養水分、特にリンを効果的に得て、植物生長に役立てているだけでなく、菌根菌は植物の病害虫抵抗性や環境ストレス耐性を強めて、果実品質などを向上させる。植物と菌根菌は、単に養分のやりとりだけでない共生関係を築いているのである。

農文協「菌根菌の働きと使い方」石井孝昭 著

いいじま農園の試行

土を豊かにするため5つの実践

除草はしません。草は大切な肥料です。背丈が大きくなり過ぎて野菜の生育に支障がありそうになったら、刈り取って「草マルチ」にします。‥草の根は枯れていって、やがて土の隙間になり、肥料としての効果とともに、土を柔らかくしてくれます。刈り取った草は、「草マルチ」として土の上に置き、時間はかかりますが、やがて肥料成分を含んだ豊かな土になります。そして、土の中の微生物のえさになります。

②野菜の残渣は、「草マルチ」として土の上に置いています。‥草と同じように土を肥沃にしてくれます。土の中の微生物のえさになり他、降雨時の泥はねも防げるので病気予防にもなるようです。地面が草や野菜の残渣で覆われていると、雨が降らない日が続いた場合でも湿り気の維持になります。

③緑肥を育てています。‥イタリアンライングラス・赤クローバー・エンバク・ヘアリーベッチなどの種をまいて育て、刈り取って「草マルチ」にしています。地下深くまで根を張るイネ科(イタリアンライングラス・エンバク)の根は肥料になるだけでなく、やがて枯れたとき土の中に隙間をつくり、土を耕したのと同じ状態にしてくれます。ヘアリーベッチは、根に根粒を形成して窒素を固定してくれます。窒素肥料の替わりになります。マメ科の緑肥作物である赤クローバーも根に根粒が着生し、植物が利用できない空中窒素を固定してくれます。

④土を豊かにするために豆科の野菜を育てています。‥今年は大豆と落花生を育てました。収穫後、葉や茎などの残渣は土の上に残して緑肥として活用する他に、根は土を軟らかくしてくれるます。根粒も後作の栄養になります。後作としては、白菜やキャベツを育てています。

⑤基本的に耕しません。‥①~④のような「草マルチ」によって、土の中の微生物やミミズ等も増加し、豊かな土壌になっていきます。ですから、せっかく地表部分に育っている豊かな生態系を壊すことはしません。土の中に空気を入れる程度にします。

実践の記録<1年目>

刈り取った草は、草マルチとして土の上に置くと、「緑肥」になります。

夏は草が、ものすごく元気になります。10日ぶりに畑に行ってみると、「草の嵐」と言った状態です。
でも、この草が肥料になるのだと思うと、不思議に、「草を刈るエネルギー」が出てきます。背が高くなった草は、落花生の成長を阻害する可能性があるので、地上10cm程度のところで刈り取ります。また、草が成長できるようにするために、10cm残しておきます。

暑さと戦いながら、草を刈りました。元気な落花生です。
「草の嵐」‥始めに見たときの実感です。
でも、この草が肥料になると思うと、ちょっと大丈夫になります。

草が、酸性の土をやわらげてくれます。

日本の畑は酸性である場合が多いため、野菜の栽培の前に、消石灰等をまくように言われます。
しかし、下の写真のスギナは酸性をやわらげてくれるそうです。何度、退治しても生えてくるので、多くの人に嫌われることが多いスギナですが、酸性をやわらげて、野菜を作りやすくしてくれると思うと、見る目が変わります。
ですから、いいじま農園の畑では、今年も、消石灰を使用しなくても、落花生ができました。少なめでしたが、多くの方に購入していただきました。ありがとうございました。

元気な?スギナ‥何度草取りをしても生えてくるツワモノです。
でも、土の酸性を和らげてくれるそうです。
そうに思うと、草けずりも、ちょっとやりがいが出てきます。

秋から冬には、落ち葉などを「草マルチ」にします。

冬を乗り越え、豊かに育つことができるようにするために
①冷たい風や霜から、野菜の葉や茎を守るために
②野菜が育つためのエネルギーとして、土を豊かにするために

🍅畑の中にある栗の木の落ち葉を、野菜の近くに置きました。 
🍅畑の草(枯れ葉)を集めて野菜の近くに置きました。(もっと、枯れ葉を草マルチとして厚く置きたいのですが、生える草の量が少ないので残念です)

「草マルチ」の下では、土が豊かになっています。

緑肥 始め

①刈った草を土の上に置いてしばらくすると、このようになります。

②ひっくり返してみると、葉が枯れて、腐葉土のようになっています。これが肥料になります。

発芽したばかりの野菜の苗には、注意が必要なようです。

除草前のキャベツ

キャベツの小さな茎や葉です。まわりには、たくさんの草が生えてきています。
このままにしておくと、キャベツは草にまけてしまいます。そこで‥

除草後のキャベツ 

まわりの草をとり除いてみました。
これで、キャベツがまわり土のなかにある栄養を得ることができると思います。
苦土石灰も化学肥料も与えていないので、大きく育つか心配ですが、「がんばれ」という気持です

春には、草が生えてきました。土を豊かにしてくれそうです。

耕作放棄地に手を加え始めて、1年たちました。
2年目の春です。ホトケノザやオオイヌノフグリが生えていました。「無肥料でも野菜が育つ畑」の目安になる草だと書物にありました。
ことしは、たくさんの収穫が得られそうです。楽しみです。

実践の記録<5年目>

☆ 株の中と周辺20cm程度の除草を確実に行うようにしました。草に栄養を奪い取られないようにするためです。今年は7回行いました。暑い夏でしたが、成果は出てきました。